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「ありがとう」の気持ちを忘れない
佐倉教会・斉藤光重さん
FILE4 綾部 恭子さん(19)
佐倉教会
◆小さな私◆
私は長年、身長が低いというコンプレックスを抱いて、ずっと悩んできました。
腎臓病の治療のために服用していたプレドニンという副作用の強い、ステロイド剤が原因でした。その薬を成長期に飲んでいたため、小学校高学年並みの身長しか伸びなかったんです。だから、小学校、中学校、高校と、私はだんだん自分の身長を気にするようになっていきました。
高校時代は青春というより、心の葛藤のほうが多かったです。中学時代はみんな仲が良く、毎日が楽しかった。でも、高校では勉強ができる人を妬んだり、人に嫌がらせをしたりする人もいて、何だかギスギスした雰囲気が校内に漂っていました。とくに私のような小柄で、人見知りする人間は、格好の嫌がらせの対象になりました。すれ違いざまに、酷い言葉を言われたこともあります。
「どうしてあんなに背が低いの?」
他人からすればなんてことのない言葉かもしれません。でも、私だって好きで背が低いわけじゃない。そんな言葉を投げかけられるたびに、
《いままで健康で生きてこられたことに感謝しろよな!》
と、私は心のなかで怒りをぶつけるのでした。なかには、私をかばってくれる友達もいましたが、当時の私の心のなかは、汚く、ドロドロしていたように感じます。自分を悪く言う人がいれば、それ以上に汚い言葉を 心の中で叫んでいたんですから。
身長のことで傷つくたびに、私は母に相談するようになっていきました。悩む私に母は、いつもこう言うのでした。
「人にいろいろ言われても、背のことを気にしない自分をつくるのよ。相手を許す心をつくりなさい」
でも、どうしたら背にとらわれない、相手を許す私になれるのでしょうか。それって簡単なことじゃありません。悪口を言われたとたん、腹が立ってしまう。
学校の帰り道、一人になると、よくそんな自分を反省しました。
《どんなに怒ったって、背が伸びるわけじゃない。こんな心で生きていちゃダメだ。悪口を言う人はかわいそうな人なんだ。こんなことに腹を立てている自分はもっと悲しいんだぞ。体が人より小さくても、心まで小さくなることはない。もっと心の大きい私にならなきゃ!》


◆「ありがとう」の5文字◆

コンプレックスから抜け出そうとする毎日。そんなある日、大切な言葉を教えていただくことができました。
結城利之教会長さんが教えてくださった雑誌の記事の切り抜きを母が持ってきてくれたのです。
内容は、「ありがとう」という言葉に秘められた不思議な力というものでした。
「ありがとう」と書いたペットボトルと、「ばかやろう」と書いたペットボトルを用意して、水道水を同じように一晩凍らせる実験をすると、「ありがとう」と書いたペットボトルは美しい結晶ができて、「ばかやろう」と書いたペットボトルは汚く凍ってしまうそうなのです。
また、末期がんの人に2万回、「ありがとう」と言ったら、がんが消えてしまったという事例も載っていて、「ありがとう」の言葉一つで、結果や運命が変わってしまうことが書かれていました。
汚い言葉を言った分、心は汚れてしまう。「ありがとう」――この5文字は、感謝する心。これまでの私はどれだけ感謝の気持ちを持ってきたのだろうと思いました。
腎臓病とわかった小学5年生のとき、まさか自分が病気だなんてとても信じられませんでした。薬や点滴、検査のための手術。「どうして自分が?」と、思い悩んだこともありました。
でも、そのとき、父や母はどんな思いでいたのでしょうか。入院中、幼い妹と弟を連れて毎日お見舞いに来てくれた母。仕事中も私のことが心配でならなかった父。親として当然かもしれない愛情に、私は気づけずにいたんです。いつも私は心配され、愛されて育ってきたのです。それを思うと、両親への感謝の気持ちがあふれてきました。
《人と比べて背が低い高いと気にする必要なんかないじゃないか。何よりも、こうやって愛されている私がいる》


◆愛されてきた私◆

なかなか身長に対するコンプレックスから抜け出すことのできない私でしたが、少しずつ、腎臓病であり、背が低いことが私の一つの個性であり、決して自分を卑下することではないと思えるようになりました。何より、両親に愛されてきたという感謝の気持ちが、私を力強く支えてくれます。
私には小学生のころからの夢があります。それはプロの漫画家になること。いま、私は夢を夢で終わらせたくないと、漫画の専門学校に通っています。そして、腎臓病も、おかげさまで毎日の薬の服用だけですみ、快方に向かっています。
多くの人に愛されてきた私。いま、夢を持つことができるのも、音楽を聴いたり、好きなことができるのも、私を産んでくれた両親のおかげ。そして、おじいちゃん、おばあちゃん、そのまた前のご先祖さま。もし、そのなかの一人でも欠けていたら、私は存在しません。そう考えると、命のつながりはものすごく長く、大きいものに感じます。
だから、「みんな、ありがとう」その気持ちと言葉をいつも心に刻んでいきたいと思うんです。

(『Shunko』2004年vol.1より転載)

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