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21年と6カ月を精いっぱい生ききって、我が家のシャム猫・マリちゃんが永遠の眠りについた。

人間に癖があるように猫にも癖があった。逃亡癖、人間の手足に噛みつく癖。私が仰向けになって寝ていると、胸の上に乗り、寝ていることもあった。そして、そのザラザラした舌で、私の顎や顔中をペロペロ舐めていた。振り返ってみると、約7年間はマリと一緒に寝ていたと思う。

先日、実家に帰省した際、マリは弱りきった体にもかかわらず、14年ぶりに私の胸に乗って寝ていた。その感触を味わいながら、学生時代の思い出を懐かしがった。部活での勝利、彼女への告白、高校合格などの喜び、引退試合、親への反抗期、先生からの暴言、体罰、停学処分、大学受験失敗などの悲・怒……。

今思えば、マリにはいろいろと心の内を聴いてもらった。自分の気持ちを口に出すことで、葛藤しながらも前へ一歩ずつ進むことができた。

マリにまつわる思い出に万感がわきたち、「有難う。本当に有難う」と言っているうちに目から心の汗が出てきた。マリは弱った身体で、私の顎と目元をペロペロと舐めてくれた。

その3日後に、マリは流動食も食べることができない状態になった。マリは弱りきって、彼女にとって臨終の場に選んだと思われるご宝前の経机の下へ隠れるようになった。

「マリちゃんが動かなくなったー」と訴える長男坊に、妻は涙目になりながら、「マリちゃんも長生きして、今を懸命に生きているのよ。どうなるのかわからないのよ」と優しく伝えた。「マリちゃんが死ぬのは絶対嫌だー。大好きなんだものー」と泣き叫ぶ長男につられ、周囲の大人たちも「好きなマリちゃんと別れるのは寂しいね。でも生きているものは必ずいつかは死んでしまうのよ」とマリに対する思いを一挙に吐き出して涙を流した。

仏教書には『死はさけられないものであり、生あるものには必ず死が訪れる』と書かれている。それを私はわかりきった如く読んできたが、妻の言葉は私にとって死に対する認識を覚醒させてくれた。その日、私たちの外出中にマリの命は尽きた。

葬儀に向かう直前、ご宝前で最後の別れをした。その時、母は、棺中にある猫の手にお数珠をかけながら「今度生まれ変わるときは、人間になっておいで。そしてご法の縁にめぐり合うんだよ」と念じながらマリに伝えていた。

私も仏縁を祈念して、最後に一言、「マリ、本当に有難う」。

(カラカラ)


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