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20年来の旧友から一通のメールが届いた。
「店の改装にあたって意見を聞かせて。テーマは“家”。家って何だと思う?」

めったなことでは連絡をくれない男からの半年ぶりのメールだった。
彼は、大型スーパーマーケットの中で、子ども服の店を営んでいる。脱サラして構えた店だ。売上げは悪くないと聞いていたが、長年変えていなかった店内のイメージを一新したいようだ。

案の定というか、彼はすでに自分なりの構想を固めていた。
「店で“家”の提案をするつもりだけど、家族の生活感を出す気はないんだ。やはり子どもの目線に合わせた世界がいいな。しかも、その子の個性が映し出せる場所にしたい。決して親子ペア服は置かないつもり……(笑)」と言うのだ。
彼らしい発想だと思った。彼は現在、独身。バツイチだ。可愛い子ども、優しい奥さんと一緒に暮らしていた家に、今では一人で暮らしている。

店の改装の話を聞いて、若き日の彼を思い出した。彼は、昔から独創的で凝り性だった。音楽のジャンルや髪型など一風変わっていた。1年前に会った時、学生時代に乗り回していた車と同車種を買い求めたといって誇らしげに見せてきた。自らデザインした服を「半額でいいから買え」と押し売りもされた。
いつもいい夢を見て追いかける。そんな時は決まって損得勘定など抜きで動く――。今回もそんな匂いがした。

彼の生き方に対して、人はさまざまな思いを抱くかもしれない。私も、真似はできない。でも声援を送りたい。彼には私のように家族との団欒も、出迎えてくれる灯かりもない。それなのに、どこか私をうらやましがらせる。そう、彼の心の中には、好奇心の塊で、夢と現実を一緒にしてしまう独りよがりの“子ども”が昔と変わらず棲んでいるのだ。

彼には、こう書いて返信した。
「子どもの目線って?お前の目線でいいんじゃない」
そして、東井義雄先生の詩『百千の灯あらんも……』を添えた。

<店に砂場でも造ってしまうのでは……><子どもの店員がいたりして……>。想像を膨らませれば膨らませるほどワクワクしてくる。彼からの返信はまだ届かないが、彼の“家”を訪ねるのが今から楽しみだ。家の主である彼は、どんな灯をともして出迎えてくれるのだろうか。

(赤味噌)


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