| 私たちが自分自身を成長させるには、「人に伝える」という方法があります。実際、現役の教師に伺ってみると「学生のころは、単に知識を覚えればよかったです。ところが、教師になると『子どもたちに分かりやすく伝えるにはどうしたらよいか』といつも頭を悩ませ、授業の十倍の予習時間が必要です。その分、学びも深くなっていきますね」と言われます。
野球の神様≠ニ呼ばれた川上哲治元巨人軍監督は「他人は他人、自分は自分と個人プレーに走る選手では、良い選手とはいえない。野球はチームプレーだからというだけでなく、自分が習得した技術を他に教えないような自分中心の選手では大成しない」という理念で巨人軍を引っ張り、見事V9時代を築きました。
開祖さまは人に伝えることの大切さについて、次のように教えてくださっています。
私の恩師の新井助信先生は、「人に教える立場になると、自分が真剣に勉強せずにいられなくなる」と教えてくださったものです。よく分かっているつもりのことが、いざ人に教えてみると、まだまだ理解の不十分なところがあったと気づかされます。それで勉強し直して、相手に納得してもらおうと心をくだくことで、より自分の理解が深まっていくわけです。
(『開祖随感』)
人に伝えることで、感動を味わい、その後の人生に大きな影響を受けた方の体験を紹介します。
ビアガーデンの季節になると、少年期の親友で今は高校教師のEのことを思い出す。
その日、われわれは母校の教師を招き、ビアガーデンでクラス会をした。ビールが心地よく回ってきた頃だった。「ところでお前は、なぜ教師になろうと思ったんだ」と、恩師がEに聞いた。Eはためらいながらも、学生時代の実習中の出来事を話した。
Eの実習にあてられた小学二年生のそのクラスは、知恵の発達が遅れている子二人を含む編成だった。校庭の花壇で子どもたちにタネを蒔かせたあとでEは教えた。「毎朝、みんなで水をやって大事に育てれば、きっと大きな花が咲くからな」。
数日後のこと、その日は朝からどしゃ降りだった。校庭に一歩入ったとたん、Eは花壇の方をみてハッと足を止めた。クラスの知恵の発達が遅れている子二人が、傘をさしながら一生懸命にタネに水を与えていた。毎朝、水をやれば大きな花が咲く。二人はEが教えたことを心から信じ、そのとおりを実行していたのだった。
「その時、やっと教師になろうという決心がついた」。Eの話を、われわれはジョッキを持つ手を忘れて聞き入っていた。振り返ってみると、恩師の目は真っ赤になっていた。
(『佼成新聞』続・法華経のこころ)
私たちは、教えていただいたことを周囲の人に伝える努力を通してこそ、感動を味わい本物になっていくわけですね。 |